「小規模宅地等の特例」の適用を使うことができると、相続税が大きく下がります。
しかし小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限まで継続していくつかの要件を満たしていなければなりません。
例えば、小規模宅地等の特例の適用を受けようと考えていた宅地を相続税の申告期限までにうっかり売ってしまうと、その宅地につき特例の適用を受けられなくなる場合があります。
どんな要件があるかについてお話いたします。
※ この記事では小規模宅地等の特例のうちよく使われる「特定居住用宅地等」と「特定貸付事業用宅地等」についてのみ解説いたします。
特定居住用宅地等の要件
亡くなった人の自宅の敷地を相続した場合、要件を満たせば「特定居住用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
特定居住用宅地等に該当すると、自宅の敷地の評価額のうち330㎡まで80%の減額を受けることができます。
▼特定居住用宅地等についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
ただし特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、「自宅の敷地を誰が相続したか」によって「居住継続要件」や「保有継続要件」が課されます。
- 居住継続要件:相続した人が、相続税の申告期限まで引き続きその自宅に住んでいること。
- 保有継続要件:相続した人が、相続税の申告期限まで引き続きその自宅を持っていること。
※ 相続税の申告期限:亡くなった日の翌日から10か月
相続した人によって、次の要件が課されます。
相続した人 | 適用要件 |
---|---|
亡くなった人の配偶者 | なし |
亡くなった人と一緒に住んでいた親族 | 「居住継続要件」と「保有継続要件」 |
亡くなった人と別居していた親族(家なき子) | 「保有継続要件」 |
亡くなった人の自宅の敷地を配偶者が相続した場合、相続後その自宅に住まなくても、すぐに売ってしまっても小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
亡くなった人と一緒に住んでいた親族が相続した場合、「居住継続要件」と「保有継続要件」が課されます。
したがって、家の持ち主が亡くなったからといって10か月以内に引っ越したり売ったりすると、自宅の敷地につき小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなります。
別居の親族であっても「持ち家がない」「亡くなった人の配偶者や同居親族がいない」などの要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
この場合は「保有継続要件」のみ課され、その家に住まなくても大丈夫です。
貸付事業用宅地等の要件
貸地、貸家の敷地、駐車場など人に貸している宅地を相続した場合、要件を満たせば「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
貸付事業用宅地等に該当すると、宅地の評価額のうち200㎡まで50%の減額を受けることができます。
▼貸付事業用宅地等の詳しい記事はこちらをご覧ください。
ただし貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、「事業継続要件」と「保有継続要件」が課されます。
- 事業継続要件:相続した人が、相続税の申告期限まで引き続き貸付事業を行っていること。
- 保有継続要件:相続した人が、相続税の申告期限まで引き続きその宅地を持っていること。
※ 相続税の申告期限:亡くなった日の翌日から10か月
したがって、相続があってから10か月以内に貸付事業をやめたり宅地を売ったりすると、その宅地につき小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなります。
まとめ
小規模宅地等の特例の適用を受けようとする宅地につき、「居住継続要件」「事業継続要件」「保有継続要件」を満たさなくなると、特例の適用を受けることができなくなるので気を付けましょう。
特に相続税の納税資金を得るために、相続が起こってから申告期限までに宅地を売る場合、その売ってしまう宅地には小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなります。
小規模宅地等の特例をどの宅地に適用するかで、相続税の金額はだいぶ変わります。
▼複数の宅地がある場合、小規模宅地等の特例をどの宅地に適用するかの有利判定は、こちらの記事をご覧ください。