生涯未婚を貫くライフスタイルが増加しつつある現代、おひとりさまがお亡くなりになった時ご自身の遺産の行く先をご存知でしょうか?
「自分が死んだら遺産は全部寄付したい。」「お世話になったあの人に財産をあげたい。」
このように考える方も多いと思われますが、そのためには生前に準備が必要です。
遺言書がなく法定相続人がいる場合には法定相続人が相続
遺言書を作成しておけば、遺産を好きな人に好きなとおり分けることができます。
しかし遺言書がない場合、遺産は法定相続人が相続します。
▼法定相続人の記事はこちら
「おひとりさま」だからといって法定相続人はいない、とは限りません。
次の場合にはおひとりさまであっても法定相続人がいるため、遺言を残さない場合、法定相続人がおひとりさまの遺産を相続することになります。
1.父母が健在の場合、もしくは父母は死亡しているが祖父母が健在の場合
父母が健在の場合は、父母が法定相続人になります。
父母は亡くなっているが祖父母が健在の場合は、祖父母が法定相続人になります。
2.父母・祖父母は死亡、兄弟姉妹がいる場合
父母・祖父母が亡くなっているが兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。
3.父母・祖父母・兄弟姉妹は死亡、甥・姪がいる場合
父母・祖父母・兄弟姉妹が亡くなっているが甥・姪がいる場合は、甥・姪が法定相続人になります。
甥・姪も亡くなっている場合、甥・姪の子どもは法定相続人にはなりません。
遺言書がなく法定相続人がいない場合には国に帰属
法定相続人がいない、遺言書もない、という場合には誰も遺産を引き継ぐ人がいないため、国庫に帰属することになります。
日経新聞の記事によると、遺産が国庫に納付される金額は年間400億円にもなり、この10年で2.5倍に拡大しているそうです。
おひとりさまがお亡くなりになり、誰も相続手続きする人がいない場合の遺産の流れを簡単に説明します。
1.相続財産管理人が選ばれる
亡くなった人に身寄りがない場合、利害関係人などの申し立てにより家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
誰も申し立てをしない場合、遺産は宙に浮いたままになります。
利害関係人とは、次のような方になります。
・ 亡くなった人にお金を貸し付けている、代金の支払いや財産の引き渡しを請求したい債権者
・ 財産分与の申し立てをしたい特別縁故者(事実婚のパートナーや一緒に住んでいた人、亡くなった人の介護や看護をしていた人など)
など
家庭裁判所は、相続財産管理人が選ばれたことを官報に公告(広く一般に知らせる)し、もし相続人がいれば申し出ることができます。
2.債権者・受遺者に向けた公告、弁済
相続財産管理人は、相続財産の債権者(亡くなった人にお金を貸し付けている、代金の支払いや財産の引き渡しを請求する権利のあるもの)・受遺者(遺言を受けた人)を確認するための公告をします。
相続財産管理人は、裁判所の許可を得て、亡くなった人の不動産や株を売却し、金銭に換えます。そして債権者・受遺者に弁済を行います。
3.相続人に向けた公告
なお相続人が見つからない場合、本当に相続人がいないかどうかを確認するため、再度相続人に向けて公告をします。
相続人が現れなければ相続人がいないことが確定します。
4.特別縁故者への分与
③で相続人が見つからなかった場合、特別縁故者は家庭裁判所に対し相続財産を分与するよう請求する手続きを行うことができます。
家庭裁判所で分与が認められれば、特別縁故者は遺産を譲り受けることができます。
5.国庫への帰属
④によっても遺産が余る場合、最終的に国庫に帰属、すなわち国のものになります。
以上で手続きが終了します。
おひとりさまだからこそ遺言書を作成しましょう
上記のとおりおひとりさまで遺言書がない場合、法定相続人がいれば法定相続人に、法定相続人がいなければ国に遺産が行くことになります。
しかし、疎遠な身内や国よりも
・ お世話になった親しい方(事実婚のパートナー、介護をしてくれた方、親しい友達など)
・ 活動を支援する団体への寄付
などへ遺産を残したいと思われる方も多いでしょう。
おひとりさまだからこそ、遺言書を作成し、自分が望むとおりに遺産を残すようにしましょう。
寿命を考えると、兄弟姉妹もしくは甥・姪が法定相続人になることが多いと思われます。
しかし、中には兄弟姉妹や甥・姪と仲が良くない、またはあまり付き合いがないなどの理由から、自分の遺産を相続させたくないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
兄弟姉妹や甥・姪に遺産を残したくないときは、他の人に財産を残す旨の遺言書を作成しておけば、兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がないため、遺産がいくのを回避することができます。
▼遺留分の記事はこちら
遺言書によって遺産を渡すことを「遺贈」といいます。
相続人以外の方に財産を残す場合の遺言書の書き方は、「~に相続させる」ではなく「~に遺贈する」になります。
自分の残したい方へ間違いなく残すためには、自分で遺言書を書く自筆証書遺言ではなく、公証人が作成する公正証書遺言とされることをおススメします。
▼自筆証書遺言と公正証書遺言の記事はこちら
ご自身で生前に財団などを設立し死後そちらへ遺贈する、という方法もあります。
おひとりさまの相続のまとめ
- おひとりさまでも法定相続人がいれば、法定相続人が相続する。
- 法定相続人がだれもいない場合、遺産は国に帰属する。
- 法定相続人や国ではなく自分の望むとおり遺産を残したいのであれば、遺言書が必要。
おひとりさまの相続は今後ますます増えてくるでしょう。
おひとりさまだからこそ自分の遺産の行方が気になるかもしれません。自分の遺産の残し方を、元気なうちから考えておきましょう。