相続税の申告に慣れている税理士であれば、必ず亡くなった人の通帳を少なくとも5年分をご用意いただくようお願いし、お金の流れを拝見します。
この通帳のチェックが相続税申告で一番重要と言っても過言ではありません。
通帳からどのようなことを知りたいのか、なぜチェックが重要なのかをお話いたします。
なぜ通帳のチェックが重要なのか
通帳をチェックすることで、何に使っている口座なのか、大きな金額(ご家庭にもよりますが大体50万円以上)の流れを把握します。
「お金の流れ」とは主に、
- 亡くなった人の口座間の移動
- 亡くなった人の口座からご家族の口座への移動
- どこの口座にも移動していない(つまり使ったorタンス預金)
この3つのパターンに分かれます。
お金の流れで不明なものがあれば、ご家族に何に使ったかご存知かをお聞きします。
なぜこのようなことをするのかというと、税務署が職権で亡くなった人の口座を確認し、お金の流れに疑問があれば税務調査にやってくるからです。
そこで税務調査で聞かれそうなところを先に把握し、できるだけ説明できるように準備しておく、というのが通帳チェックの狙いです。
とはいっても亡くなった人のお金の流れをご家族がすべて知っているということも少なく、まして遠く離れて生活されている場合は知らないことがほとんどでしょう。
もちろん、わかる範囲でお教えいただければ結構です。
お金の流れのパターン3つを紹介
お金の流れは、上記のとおり大きく3つのパターンに分かれます。
また、お金の流れを見る作業の最中で、今まで把握していなかった財産の存在がわかることがあります。
1.亡くなった人の口座間の移動
亡くなった人のA口座からB口座に移している場合です。
この場合は単に自分のお金を自分の口座に移しているだけなので、特に問題はありません。
2.亡くなった人の口座からご家族の口座への移動
贈与の場合
亡くなった人からご家族への贈与があった場合、贈与税の申告の有無を確認します。
たまに、本当は贈与税の申告が必要だったのに家族間のやり取りだったのでつい・・・ということもあります。
その場合は期限後申告(遅れて申告)することを検討します。
また、亡くなった日から3年以内に贈与されたお金があれば、「3年以内の生前贈与加算」として相続財産に計上します。
ご家族に生活費などを預けていた場合
ご自身の体調が悪く、ご家族にある程度まとまったお金を預けて生活費や医療費などの支払いをまかせることがあります。
この場合は実際に生活費や医療費などに使ったお金を整理し、残りを相続財産として計上します。
ご家族にお金を貸していた場合
ご家族にお金を貸していた場合、そのお金は「貸付金」として相続財産に計上します。
貸付金は返してもらえる権利があるため、相続財産となります。
ただし、それが本当に貸付だったのか、あるいは贈与なのかはよく問題になります。
借用書があるか、実際に少しずつ返していたのか、ムリがない返済計画なのか(例えば100年かけて返すなどありえない内容になっていないか)などが焦点になります。
3.どこの口座にも移動していない場合
お金は出ているがどこの口座にも移動していない場合、何かに使った、もしくはタンス預金が考えられます。
何かに使った場合、相続財産になるもの(例えば株やクルマなど)を買ったのか、あるいは家の修繕などに使ってもう手元にないのかを確認します。
タンス預金であれば、実際にある金額を相続財産に計上します。
たま~にご家族が勝手に引き出して使ったケースもありますが、この場合はご家族への貸付金として相続財産に計上することが多いです。
その他預金チェックでわかること
上記のほか、預金をチェックしていると
- これまで把握していなかった保険料の支払いがある→何かしらの保険契約がある
- 知らない株の配当金の入金がある→株を持っている
など、新たな財産の発見につながることがあります。
この場合は内容を精査し、相続財産に計上することになります。
まとめ
ご家族にお金の流れをお聞きすると、その場ではわからなくても、後日「そういえばそのころ家の修繕をしていた」「こんなメモが見つかった」など少しずつ判明することもあります。
それでもすべて判明することは難しいでしょう。
しかし税務署サイドも、使ってすでに手元になく相続人も使い道を知らないお金については、何かウラをつかんでいない限り追及することは難しいのではないかと思われます。
このように申告時に預金のチェックをすることで、お金の流れの疑問点をなるべく事前につぶし、万が一税務調査がきたときに備えることができます。