相続税がかかると財産の半分くらい持っていかれるって本当?
よほどの資産家でない限りそんなことはないので安心してください。
「相続税は高い」というイメージから、たまに上のような質問を受けます。
しかし、
- 相当の資産家で
- 相続税の特例が受けられず
- 相続人が1人
といったようなことでない限り、財産の半分を税金として持ってかれることはありません。
相続税はどのように計算されるか、そのポイントをお話します。
相続税の計算方法
相続税が課されるのは財産から基礎控除額を引いた金額
相続税は、
財産-債務(借入金や未払金など)-葬式費用-基礎控除額
に対して税率をかけて計算します。
したがって、財産-債務-葬式費用が基礎控除額以下であればそもそも相続税はかかりません。
基礎控除額とは、
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算します。
したがって、法定相続人の人数が多ければ多いほど相続税が少なくなります。
例えば、
- 財産1億円
- 債務+葬式費用が1,000万円
- 法定相続人が3人(妻、子ども2人)
であれば相続税が課される金額は、1億円-1,000万円=9,000万円ではなく、
1億円-1,000万円-基礎控除額4,800万円(3,000万円+600万円×3人)=4,200万円
ということになります。
▼法定相続人についての記事はこちらをご覧ください。
法定相続分で按分
相続税の税率は、上で求めた4,200万円にかけるのではありません。
4,200万円を法定相続分で按分します。
上の例で言えば、妻の法定相続分は1/2、子どもの法定相続分はそれぞれ1/2×1/2=1/4ずつですから、
妻の分:4,200万円×1/2=2,100万円
子どもの分:4,200万円×1/4=1,050万円
になります。
▼法定相続分についてはこちらの記事をご覧ください。
相続税は「超過累進税率」がとられている
上の法定相続分で按分した金額に対して税率をかけます。
相続税の税率は次のとおりです。
相続税の税率は、財産が多いほど税率が高くなる「超過累進税率」がとられています。
例えば「3,000万円以下」は税率15%になっていますが、これは3,000万円までに対して15%が課されるというのではなく、1,000万円までは10%、1,000万円を超えた分からは15%が課されるということです。
1,000万円までの部分は表の右にある「控除率」で調整しているのです。
上で計算した金額に税率を当てはめると、
妻の分:2,100万円×15%-50万円=265万円
子どもの分:1,050万円×15%-50万円=107万5,000円
この一家にかかる相続税の合計額は、
265万円+107万5,000円×2人=480万円
この例で言えば(財産-債務・葬式費用)に対する相続税の割合は、
9,000万円÷480万円=18.75%
けっして安くはありませんが、財産の半分にはほど遠い税金です。
▼ここまでの流れをイラストにしました。
各相続人にかかる相続税は、480万円を各相続人が実際に相続した財産の割合で按分します。
相続税が安くなる特例がいくつかある
相続税には、税負担が重くなることで残された相続人の生活が苦しくならないよう、税金を大きく減らす特例があります。
よく使われる特例は、
- 配偶者が相続した分に適用される「配偶者の税額軽減」
- 自宅の敷地を相続した場合などに適用される「小規模宅地等の特例」
です。
「配偶者の税額軽減」は、配偶者が相続した財産のうち法定相続分と1億6,000万円のうちどちらか大きい金額までは相続税がかからない特例です。
自宅の敷地を相続して「小規模宅地等の特例」が使える場合は、敷地の評価額の80%が減額されます。
他にも死亡保険金をもらったら「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
このように、特例を使うことができれば相続税をぐっと減らすことができます。
財産の半分を相続税で持ってかれる人ってどんな人?
では、財産の半分を相続税で持ってかれる人とは?
特例を何も使うことができないという前提で試算してみたところ、
- 財産が20億円
- 相続人が1人
であれば相続税が10億820万円になり、半分ちょっと持っていかれることになります。
相当な富裕層です。
まとめ
財産の半分を相続税で持っていかれる人はそうそういません。
理由は、
- 財産から基礎控除額を引いた金額が相続税の対象になる。
- ①に直接税率をかけるのではなく、法定相続分で按分した金額にそれぞれ税率をかける。
- 相続税は超過累進税率がとられている。
- 相続税には大きく負担を減らす特例があり使える人が多い。
相続税はけっして安くはありませんが、相当な富裕層でない限り半分持っていかれることはありません。