事業用と個人用に分けていない口座やクレジットカードの仕訳はどうしたらいい?
個人事業主の場合、事業用と個人用に口座やクレジットカードをきっちり分けるに越したことはないのですが、どうしても両者が混在することもあるでしょう。
この記事では、
- 事業用と個人用の口座はどう決めるの?
- 個人用の口座から事業用の経費を使った時の経理処理
- 事業用の口座からプライベートのお金を使った時の経理処理
- 事業用と個人用併用のクレジットカードの経理処理
について解説します。
そもそも「事業用」と「個人用」はどう決めるの?
「事業用」と「個人用」の口座はどのように決まるの?
ご自身で「事業用」と決めたものが事業用の口座になります。
「事業用の口座」と聞くと、屋号入りなど何かしら特別な口座でなければならないとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
ご自身で「これは事業用の口座」と決めたものが事業用の口座であり、今まで使っていた個人名の口座で大丈夫です。
そして、青色申告特別控除55万円(電子申告の場合は65万円)を選択する場合、事業用と決めた口座は事業所得や不動産所得の貸借対照表にその残高をのせることになります。
一方個人用の口座は貸借対照表にのせる必要はありませんが、その口座に事業用の入出金があれば「事業主勘定」を使って経理処理を行います。
個人用の口座から事業用の経費を使った時の経理処理
個人用の口座から事業で使っているケータイ代が引き落とされているけど経理処理はどうしたらいい?
「事業主借」を使ってください。
個人用の口座から事業用の経費を出すこともあるでしょう。
しかし個人用の口座は貸借対照表にのらないため、「事業主勘定」を使って次のように処理します。
経費〇〇円 / 事業主借〇〇円
例えば個人用の口座から事業用のケータイ代が引き落とされているのであれば、
通信費〇〇円 / 事業主借〇〇円
というように処理します。
事業用の口座からプライベートのお金を使った時の処理
事業用の口座から国民健康保険料が落ちるんだけど経理処理はどうしたらいい?
「事業主貸」を使ってください。
事業用の口座から事業とは関係のないプライベートなお金(生活費、国民年金・健康保険料、所得税や住民税、生命保険料など)を使うこともあるでしょう。
しかしプライベート用だからといって経理処理を行わないと、貸借対照表の事業用口座の残高が合わなくなります。
そこで事業用の口座からプライベートなお金を使った場合には、
事業主貸〇〇円 / 普通預金〇〇円
として処理します。
事業用の口座からお金を引き出した時の処理
事業用の口座からお金を引き出した時の経理処理はどうしたらいい?
「事業主貸」を使ってください。
事業用の口座からお金を引き出した場合は、
事業主貸〇〇円 / 普通預金〇〇円
として処理します。
事業用と個人用併用のクレジットカードの処理
個人用のクレジットカードを事業用にも使っているんだけど経理処理はどうしたらいい?
引落口座が事業用か個人用かで処理が違います。
例えば、クレジットカードの引き落としが10万円で、内訳は「事業用3万円、プライベート用7万円」だったとします。
引落口座が事業用の場合と個人用の場合の処理を見ていきましょう。
事業用の口座から引き落とされる場合
事業用の口座から引き落とされる場合、貸借対照表の事業用口座の残高を合わせるため、
経費3万円 / 普通預金10万円
事業主貸7万円
というように、プライベート部分を事業主貸として処理します。
個人用の口座から引き落とされる場合
個人用の口座から引き落とされる場合、事業用の経費部分のみ抜き出して、
経費3万円 / 事業主借3万円
として処理します。
事業主勘定ってそもそも何を意味するの?
さっきから「事業主貸」「事業主借」ってことばが出てくるけど、そもそも事業主勘定ってなに?
個人事業主の自分とプライベートの自分との間でお金の貸し借りをすることです。
個人事業主の自分を中心に考えた時に、
事業用の口座から生活費を払ってあげた → 個人事業主の自分がプライベートの自分にお金を貸してあげた
個人用の口座から事業用の経費を払ってもらった → 個人事業主の自分がプライベートの自分からお金を借りた
というイメージです。
とはいっても別にこのお金の貸し借りを精算するわけではなく、便宜上にすぎません。
「事業主貸」「事業主借」を使い分けるのがめんどうな場合は一本化しよう
どっちが「事業主貸」か「事業主借」かわからなくなる!
「事業主勘定」や「事業主貸」に一本化してしまいましょう。
「事業主貸」「事業主借」を使い分けるのがめんどうであれば、貸借どちらでも使える「事業主勘定」や出てくることが多い「事業主貸」に一本化してしまいましょう。
なぜかというと、事業主貸と事業主借は年をまたぐとゼロにリセットされ、元入金に集約されてしまうからです。
1月1日の元入金=前年の元入金+前年の利益-前年の事業主貸+前年の事業主借
会計ソフトでは繰越処理を行うと上記の元入金の計算と事業主貸・事業主借のリセットを勝手にやってくれます。
したがって事業主貸・事業主借をきっちり分けることに大きな意味はないので、分けるのがめんどうであれば一本化することをおススメします。
まとめ
- 個人用の口座から事業用の経費を払ったら、経費〇〇/事業主借〇〇
- 事業用の口座からプライベートなお金を払ったら、事業主貸〇〇/普通預金〇〇
- クレジットカードは引落口座が事業用か個人用かで処理が異なる。
- 事業主貸・事業主借に使い分けがめんどうであれば「事業主勘定」や「事業主貸」に一本化。
個人事業主はどうしても事業用と個人用が混在するので帳簿つけに悩んでしまいます。
「事業用の口座はきっちり残高を合わせる」「経費の出所が事業用の口座でなければ事業主勘定」というあたりを意識して処理すればスッキリするのではないでしょうか。