相続税の申告をする際、必ず亡くなった人及びそのご家族の通帳を見せていただきます。
亡くなった人の亡くなった日時点の残高さえわかればいいのでは?と思われるかもしれませんが、通帳にはいろいろと重要な情報が載っているのです。
相続税の申告では通帳をできる限り見せていただく
相続税の申告では、通帳をできれば10年分くらいお預かりさせていただきます。
通帳から生前のお金の流れや何に使ったか、漏れている財産はないか、などを確認することができるからです。
また、税務署は職権であらかじめ口座を確認してから税務調査にやってきます。
したがって、相続税申告作業時にしっかりと通帳の事前調査を行うことで、できる限り相続財産の計上漏れを防ぐとともに税務調査への対策に繋がるのです。
通帳からどんなことがわかるのか
通帳からはいろんなことがわかります。
私たちは通帳からある程度大きな金額を拾い、そのお金がどこから入ったのか、どこへ出ていったのかの一覧を作ります。
不明なお金の流れがあれば相続人に聞き取りを行います。
通帳からどのようなことがわかるかをざっと説明します。
誰かにあげたお金はあるか
口座を通して、または口座からお金を引き出して誰かにお金をあげていないかを確認します。
もらった人が相続人であり、かつ相続が始まる前3年以内にもらっていれば、相続財産に加算しなければなりません。
相続税の申告作業において過去の贈与税の申告漏れが見つかることもあります。
また、「あげた・もらった」という意思がない名義預金や親族が勝手に引き出して使ったお金などは、贈与ではないため亡くなった人の相続財産に計上します。
保険料や年金収入はあるか
相続税の申告作業では、亡くなった人に関する保険証券をお預かりします。
しかし残された相続人が亡くなった人の保険契約のすべてを把握しているということは少なく、通帳から知らない保険料の引き落としや個人年金収入が見つかることがあります。
死亡保険金だけでなく、個人年金などの私的年金でまだもらっていない分や、亡くなった人が保険料を支払っていたが亡くなった人以外の人が被保険者である保険なども相続財産になります。
配当はあるか
通帳に配当金収入があり、そこから亡くなった人が株式などを持っていたことがわかります。
特に少額の投資の場合、相続人がその存在を知らないことはよくあります。
通帳では銘柄と配当金収入の金額しかわからないので、実際に何株持っていたかを調べるには亡くなった人に届いた配当金通知書を探したり、証券保管振替機構(ほふり)に調べてもらったりする必要があります。
漏れている口座はないか
通帳をお預かりすると、口座間の資金移動を調べます。
その際、知らない口座にお金が移されていて、今まで把握していなかった口座の存在に気付くことがあります。
相続の直前にお金を引き出していないか
例えば相続の直前に葬儀費用の準備のためにお金を引き出し、相続時点でそのまま手元にあれば、そのお金は相続財産に計上しなければなりません。
相続直前の引き出しでも、相続の前に生活費などで使った分は相続財産に計上する必要はありません。
その他漏れている財産債務はないか
通帳から何か相続財産に計上すべきものを買っていたことがわかればそれを計上します。
また、亡くなった日以後にお金が入っているもので相続財産に計上すべきもの、逆に亡くなった日以後にお金が出ていっているもので債務として財産から引けるものがあるかどうかを確認します。
相続人が亡くなった人の財産すべてを把握していることは少ない
相続人が亡くなった人の財産すべてを把握しているということはほとんどありません。
したがって財産の計上漏れを防ぐために通帳の確認は欠かせない作業になります。
また、相続が起こったけど亡くなった人の財産なんてまったくわからないという時は、まずは通帳を調べることをおススメします。